今回は、イチジク(無果花)の人工受粉(手作業による受粉)に素人の私が挑戦してみました。😁
「イチジク(無果花)の受粉?何のこと?だって勝手に果実が生るでしょ?!」と思われた方のために、なるべくかみ砕いて説明したいと思います。
是非、最後までお付き合いください。🤣
日本のイチジク(無果花)は、ほぼ受粉していない!?
ここでのイチジク(無果花)は、イチジク属でなくイチジク種である学名:Ficus Carica のことをさしています。※以下、イチジクと呼びます。
最近では、物流が発展してスーパーマーケットなどでも季節になると生鮮のイチジクが販売されるようになりました。
イチジクは、単為結果(たんいけっか)といいまして受精しなくても果実が生ります。
イチジクを「無花果」と書くように一見、花が無くてもドロップ型の果実が生るように見えます。花が無いと書きましたが正確には、果実に見える部位の中には、小さな花がいっぱいあります。この部位を花嚢(かのう)といいます。
余談ですが、スーパーマーケットや売店で売られているバナナ(キャベンディッシュ)は、種の無い単為結果の果実です。
イチジクは、雌雄異株(しゆういしゅ)といいまして雌(メス)の株と雄(オス)の株※厳密には、雌雄同株(しゆうどうしゅ)さらに厳密には、雌性両性異株(しせいりょうせいいしゅ)に分かれています。
日本で栽培されているイチジクの多くが雌の株です。なので物理的に雄の株は、数が少ないので受粉される機会が少なくなります。日本での雄の株は、一部の方が栽培されているのみです。
また、イチジクが受粉するには、共生関係である「イチジクコバチ(学名:Blastophaga psenes)」の存在が重要とされています。海外では「the fig wasp」「wasp」と呼ばれることもあります。小蟻に羽根があるような姿なんですが、日本には、この「イチジクコバチ」が存在していないとされています。
現在「イチジクコバチ」は、地中海地域および近辺、カルフォルニア、オーストラリア、南アフリカの一部で生息が確認されています。イチジクコバチの深掘りは、また別の機会に記事にします。
なので日本でのイチジクの雌の株は、受粉しにくい環境であって一般には、単為結果で熟した果実を召しあがられることが主となります。
稀に「イチジクは、自家受粉するから」と説明される方もいらっしゃいます。ある意味、正解かもしれません。ただし日本の現状の環境では、極めて難しい条件になります。
なぜ人工受粉???
これまでの通り自然には、現状、日本でのイチジクコバチによる受粉は、極めて困難です。
なので人工的な受粉が選択としてあるのですが、イチジクの人工受粉に挑戦したいと考えに至った経緯について
- 受粉するとイチジクの果実の味が美味しくなるとの話しがありまして検証してみたくなりました。
- 受粉の機会が限りなく少ないということは、突然変異がない限り、クローンが多くなる。
- 受粉をすることで種子ができイチジクの実生が可能となります。
1.の美味しくなるとの話し、ただでさえイチジクが美味しいと感じる私には、これ以上、美味しくなるとはどうなるの?との好奇心がきっかけです。
2.クローンが悪いという話しでは、ありません。クローンが多くなると病気や気候変動などに弱くなるとされているからです。少しでもウイルスや病原菌に強いイチジク品種をつくってみたいとの思いがあります。
3.イチジクを種から育てる機会がなかなか無いのでやってみたい。それに合わせて新品種を作りたいのです。
夢は、いつか新品種の品種名(流通名・園芸品種名)へ、いまでも無条件に私の植物ライフを支えてくれる妻や娘達の名前を品種として残したいと考えてます。
仮に新しい特徴が出たと認識できても他の方がどのように評価するかは、未知です。なので客観性のある評価と基準のような議論は、今後の日本でも一般に共有されていけると良いと感じてます。※もしかして既に命名の基準が存在していたらすみません。確認不足です。
原則、品種名(流通名)を品種登録や商標登録するつもりは、毛頭ございません。よいものを皆で楽しんだり共有できればそれでよしと考えてます。
イチジクの人工受粉
イチジクの人工受粉について調べたのですが、日本での情報が少なく自分なりに海外からの情報を収集してここへメモ書きしようと思います。
時期
イチジクの受粉には、時期があります。
春~夏 | 夏~秋 | 冬 | |
---|---|---|---|
雌の株(Female) | 夏果(Breba) | 秋果(Main) | |
雄の株(Male) | プロフィチ(Profichi) | マモーニ(Mammoni) | マンメ(Mamme) |
日本のイチジクの主な雌の株(Female)は、果実が生る(熟す)時期によって「夏果(Breba)」「秋果(Main)」に分かれます。
夏果(Breba)は、春から夏にかけて今年より前の茶色い古い枝から生えた果実のことです。
秋果(Main)は、夏から秋頃に今年から伸長したまだ緑色が残るような枝から生えた果実のことです。
イチジクの雄の株(Male)のことをカプリ(Caprifig)と呼びます。果実は、生る(熟す)時期によって「Profichi(プロフィチ)」「Mammoni(マモーニ)」「Mamme(マンメ)」に分かれます。
Profichi(プロフィチ)は、雌の株(Female)の夏果(Breba)と同じ時期の果実のことです。
Mammoni(マモーニ)は、雌の株(Female)の秋果(Main)と同じ時期の果実のことです。
Mamme(マンメ)は、冬期の果実のことです。
雄の株(Male)であるカプリ(Caprifig)は、1年を通じて3回も果実を生らせます。それは、イチジクコバチが共生関係(ライフサイクル)によりカプリ(Caprifig)の果実へ出入りするからです。Profichi(プロフィチ)は、受粉のために必要でありMammoni(マモーニ)は、夏季を過ごしMamme(マンメ)は、イチジクコバチが越冬するのに必要です。
長くなりましたが、人工受粉には、カプリ(Caprifig)の熟したProfichi(プロフィチ)からの花粉が重要となります。そして受粉には、雌の株(Female)の親指ほどの大きさになった若い秋果(Main)が必要となります。
道具
イチジクの人工受粉には、道具が必要となります。
- ナイフ
- 100ml以上が量れる計量カップ:2個
- 紙カップ(花粉の採取用)
- 茶こし
- 注射器(シリンジ)10ml と 針(18ゲージ)
- 0.1g単位で量れるはかり
材料
イチジクの人工受粉の材料が必要となります。
- イチジクの花粉: 0.5g
- 水(精製水): 100mL
- グラニュー糖または、ブドウ糖: 2g
- 粉末寒天: 0.2g または、キサンタンガム: 0.2g
例えばイチジクの花粉が 5g 採れるようであればそれぞれ10倍の容量で換算してください。
実験を兼ねて人工授粉を試行しているので今後、分量など変更される場合がございます。ご了承願います。
受粉液の作り方
花粉を採取します。
熟したカプリ(Caprifig)の果実とナイフを用意します。
カプリ(Caprifig)の果実を軽く押してみます。ポフポフするような軽いスポンジのような状態であれば熟しています。
ナイフで縦に半分に割ります。芽元の方から手で半分に割いても割れます。
紙カップへ半分に割ったイチジクの実を裏から押して反転させます。背中(皮目)を指で叩くように花粉を採取します。
写真の黒ぽい粒は、不純物です。写真だとわかりにくいのですが白い小さな粉が花粉です。
計量カップへ茶こしをセットして採取した花粉を注ぎます。さらに水を注いで茶こしで不純物を除きます。
キサンタンガムは、ダマになりやすいので、計量したグラニュー糖とキサンタンガムをよく混ぜ合わせします。
計量カップへ予め抽出した花粉液(100ml)をスプーンなどで渦ができるくらい、かき回します。
先のグラニュー糖とキサンタンガムをよくかき回した花粉液へ投入します。さらによくかき混ぜてください。
受粉液が赤いのは、花粉を抽出する時に果実ごと水の中で振るった時に果実の色素が移ったものです。
受粉液は、他の実験レポートによると⁻20℃で数週間、保存できるとされています。5℃で1週間保存できたとする報告もあります。しかし、受粉率?は、日に日に落ちていくようなので可能な限り鮮度のよい状態で使った方がよいかもしれません。
受粉の手順
これから紹介させていただく受粉の手順は、著名なカプリ研究家の Mike Lamonte 氏が考案された通称「Lamonte Method」という手法です。
受粉液を満たします。もし空気を吸い込んでしまったら針を上に向けて空気を押し出して抜いてください。
ココがポイントとなります。😮果実の下部へ「抜き穴」を針で開けます。受粉液は、まだ打ち込みません。
この「抜き穴」により後から打つ受粉液がイチジクの果実の中にまんべんなく行き渡り穴から漏れる水滴により適量が見た目で判断でいるという画期的な手法となります。
針の中に果肉が詰まることがあるので注射器から外した針だけで「抜き穴」を開ける方が良いと思います。
イチジクの「お尻の穴」から注射針を刺していきます。😱
針先が奥まで届く必要は、ないので穴の口に近い空洞に到達したかな?くらいの位置(5mm~10mm 程度の深さ)で受粉液を注入していきます。
受粉液が「抜き穴」もしくは「お尻の穴」から溢れてきたら注入を止めます。
穴は、そのまま放置してても問題ありません。昆虫などの侵入などを防ぐのであれば果実袋かテープで穴を塞ぎます。
以上、イチジクの人工受粉の方法でした。思ったほど難しくないので是非、みなんさんもチャレンジしてみていただきたいです。
ただし、課題は、多々ありまして解決していきたいと思います。
遺伝学的な内容でイチジクの新品種には、「持続性(Persistent)」の遺伝子が必要でこの辺の話も別途、記事にします。
また、私の独学での実験を兼ねた内容となっているため、不備、不明な点、または、誤りなどありましたらご教授いただければ幸いです。
同じように人工受粉や新品種を志しておられる方、情報共有させていただければと存じます。
受粉の成果について後日、報告させていただきます。最後までお付き合いいただきありがとうございました。🙏
それでは、マタ😊🙌
楽しく拝見させて頂きました。
私も昨年暮にCaprifig(male)の挿穂を入手し、目下苗木を育てています。何時になるか分かりませんが、Rrocichiの実が得られたら
人工受粉に挑戦してみようと思います。今後の投稿を楽しみにしています。
楽しく拝見させて頂きました。
私も昨年暮にCaprifig(male)の挿穂を入手し、目下苗木を育てています。何時になるか分かりませんが、Rrocichiの実が得られたら
人工受粉に挑戦してみようと思います。今後の投稿を楽しみにしています。