今回は、「イチジク(無花果)」の穂木(ほぎ:カットした枝のこと)を「挿し木(用土に穂木を挿す)」して室内で「LEDライト」により栽培する場合のお話です。
シーズンに室外でイチジクを挿し木する方法は、詳しい方が解説されているサイトや動画が多々あります。そちら参考にして、ご自身の環境にあった方法を見つけてください。
イチジクの「挿し木」の基本は、2~3節(ふし:茎の膨れてる部分)を残した穂木を用土へ挿して管理します。
考え方は、植物の種(たね)を用土にまいて水をあげる実生(発芽させる)と同じです。
発根や発芽するまでは、穂木の養分で成長しますので短すぎる穂木や細い穂木は、難しくなります。
穂木の発根や発芽は、鮮度や保水のバランスが重要です。
特に穂木は、乾燥に弱いので注意が必要です。
一般的なイチジクの挿し木の方法と異なると思うのですが、根腐れを気にしないでやや過湿ぎみで管理してます。挿し木の用土は、無機質の鹿沼土小粒1:1硬質赤玉土小粒を使用しています。底面給水させてます。サーキュレーターで弱い風も当ててます。表面の鹿沼土が乾いたらすぐに水をあげるようにしています。
私は、鮮度が重要と考えているので、イチジクの穂木を挿し木する場合、季節を問わずに、すぐに実施することをオススメします。
室内環境
まずは、先に気温について軽くふれさせていただきます。
イチジクのみならず植物の栽培は、同じ品種でも個体差や環境により様々な差が生じます。
あくまでも一例としてください。
「挿し木」の発根や新芽の発育を促す場合の気温
室内の「気温」は、最低でも約15℃を下回らなければ問題ないかと思われます。冬場などで室内が15℃を下回るようであれば暖房器具等で室温を調整してください。
イチジクの品種や個体差も様々です。発根や新芽の動きが見られない場合は、室温を20℃以上にして様子を見てください。
穂木や挿し木を休眠状態にする場合の気温
イチジクは、気温が低いと休眠状態(落葉します)になります。穂木や挿し木の状態で休眠させることも可能では、あります。
春の屋外での挿し木シーズンまで休眠させるように説明されている場合があります。
イチジクは、温暖な気候に適した植物なので穂木のまま長時間の低温状態にあると枯れることがあります。穂木の休眠管理ができる方は、問題ありません。
慣れない間は、なるべくイチジクを成木や苗木の状態(根が張っている)で休眠させてあげましょう。
「どうしても寒い環境に合わせなければならない理由」がなければ、穂木の状態で休眠状態にするメリットが感じられないのでオススメは、しません。
照明
室内であっても季節を問わず日光が差し込むような明るい条件であればレースカーテンなどで遮光調整しながらイチジクの「挿し木」は、成長すると思われます。
わが家の場合、部屋の片隅で暗い環境は、日光の代わりにLEDなどの照明器具が必要となります。
植物棚の一部、カメラの都合で紫色に見えるライトは、赤色LEDと青色LEDが交互にセットされています。
LEDライトによる照明
本題となりますが「LEDライトの照明でイチジクの挿し木を行う場合」の例となります。
LEDライトの性能
「LEDライトなんて、ただ明るければ良いでしょ?!」と思われがちですが以外と奥深いものでして
以前の記事の「植物と太陽光(光)の関係 – 波長編」という内容も合わせてご覧いただければ幸いです。
「可視光」という人間の目でとらえることができる「光の色(波長)」について、植物は、「光合成」のために赤と青が大事です。※他の波長(可視光だけでなく赤外線や紫外線など含む)も植物に影響は、あります。
なのですがLEDライトの性能は、「光の色(波長)」だけでなく「演色性(CRI)」や「色温度(ケルビン)」という色彩と「照度(ルクス)」も大事になってきます。
ひと昔前までは、植物栽培用のLEDライトの性能にルーメンやワットの単位だけが表記されていたのですが、最近では、PPFD(光合成光量子束密度)なども使われるようになりました。
欧米では、LEDライトによる植物栽培の指標に PPFD(光合成光量子束密度)だけでなく関連して DLI(Daily Light Integral:1日の光合成量の積分)が重要であると考えられています。
さらに!植物栽培用のLEDライトなので使用時間が長くなることから消費電力も大事ですよね?!
これらの性能を総合してご自身の環境にあった LEDライトの評価や選定をします。
演色性(CRI)
演色性とは、分かりやすく言うと太陽光(自然光)に照らされた色に近いか?を数値(演色評価数)で表しています。
LEDライトなどの照明は、赤が強調されたり青が強調されたりする場合があります。
照明からの光を「演色評価数」という数値により自然に近い色かどうか、簡易に判断することができます。
最大値 100 CRI が自然光に照らされた色にもっとも近いということになります。
日本の場合、演色性を表す単位が「CRI(正しくは、CIE Ra 値)」ではなく「Ra」と表記されている場合があります。内容は、同じと考えてください。
演色性が 80 CRI 以上であれば、ほぼ太陽光に近い白色と変わらないと考えてよいかと思います。90 CRI 以上からは、だんだんと青みが強くなっていきます。
ただし、多くの植物は、赤の波長と青の波長が光合成に重要であることから植物栽培で過度に重要視する必要は、ありません。
赤と青の色以外が不要ということでは、ありません。まんべんなく演色されているのが自然に近いとうことになります。
把握できれば数値の判断で精度が上がる程度と考えてください。
色温度(ケルビン)
色温度(ケルビン)について演色と似ているのですが「光の色(波長)」を温度で表している単位になります。
植物の栽培方法について「明るい日影」や「明るい日向」などの表現がされている場合があります。
日中の太陽光は、約5000 ~ 6000 K(ケルビン)とされています。
数値が大きければよいというものでは、ありません。
例えば、明るい日影は、約7000 K(ケルビン)となります。
朝焼けや夕焼けは、約2000 K(ケルビン)となります。
植物の栽培に適した色温度(ケルビン)を選択しましょう。
イチジクの挿し木には、約5000 ~ 7000 K(ケルビン)がよいかと思います。
照度(lux:ルクス、lx と省略される場合もあります)
光を照らす量を表す単位には、ルクス、ルーメンなどあります。
それぞれ意味が異なるのですが「1平方メートルの面が1lm(ルーメン)の光束で照らされる時の照度」が1lux(ルクス)となります。
ややこしいですね😰
1lm(ルーメン)は、1lux(ルクス)に面積をかけた値なので例えば、10,000 lm(ルーメン)の光を 1 ㎡(平方メートル)へ照射した場合、10,000 lux(ルクス)になるという計算になります。
ライトから対象までの距離や照射される面積によって値は、変わってきます。
ここで注意が必要なのが植物は、通常、長さがあり幅もあります。形状も様々です。なので正確に植物に当たっている照度は、計測が困難となります。なので目安として判断します。
イチジクの挿し木に必要なLEDライトの性能は?
結論として正確な数値での判断は、困難です。とすると元も子もないので…
参考までに
アメリカ合衆国のイチジクがよく栽培されている地域で3月平均的な DLI(Daily Light Integral:1日の光合成量の積分)は、30-35 DLI となります。
屋外でイチジクが動き出す時期となります。
下限の30 DLI を逆算(計算式は、省略します)すると
700 PPFD(umol/s/m2)を約12 時間の照射すると約30 DLI となります。🤔
700 PPFD から照度を求めると太陽光に近い6,500 K(ケルビン)で約30,000 lux(ルクス)となります。
この辺の性能を参考に LEDライトを選んでみてください。
【例】
30 DLI は、LEDライトの性能で 60,000 lux あれば約6 時間の照射でよいことになります。
ただし6 時間の照射は、やや日照時間としては、不自然なので 46,000 lux の高い照度で約8 時間の照射が上限として妥当かと思われます。
逆に 20,000 lux くらいの低い照度だと 18 時間の照射で約30 DLI となるので現実的では、ありません。😰
下限として 26,000 lux の照度で約14 時間の照射で約30 DLI となります。
ちなみに海外の掲示板では、12,000 lux の照度で約10 時間の照射にて約9 DLI でも発根して発芽したとする報告もあります。
参考になりますでしょうか?w 数値で判断しようとするややこしいし難しいですよね😅
また、この条件の数値を下回っても超えていても、イチジクの挿し木が発根や発芽する可能性は、十分ありえます。逆に数値内であっても動きなく枯れてしまうことがあり得ます。
おわりに
ここまで記事にしておいて無責任ですが、実際に栽培する環境は、もっと複雑な要因が働きます。なので正直なところ「試してみる」というのが「答え」かもしれません。
一つの目安として参考にしていただければと思います。また、皆さんの環境では、LEDライトの性能や条件がこうだったよ!などのご報告いただければ幸いです。
それでは、マタ😋🙌